場所:東京大学駒場キャンパス18号館2階院生作業室(→キャンパスマップ)
- 檜垣洸一(東京大学大学院博士課程)
■ 研究題目:記述式フィードバックと学生による校正の分析―より直接的か、より間接的か?―
■ 要旨
本研究は、日本における英語ライティング教育研究の蓄積を高めることを目指し、大学生を対象としたライティングプログラムでのティーチングアシスタント(以下TA)による記述式フィードバック(Written feedback、以下フィードバック)と学生の校正の関係を調査した。
本研究では、以下の2つのリサーチクエスションを設定した。
(1)直接的フィードバック(Direct Feedback)と間接的フィードバック(Indirect Feedback)のどちらがより学生の校正に繋がるのか?
(2)フィードバックを与えられた結果、学生はどのような校正を行うのか?
大学生14名から集められたエッセイ78本を分析した結果、以下の結果が得られた。
1)学生は直接的、間接的、エラーに関する説明の有無などの要因に関わらずフィードバックを与えられた場合、フィードバックを与えられない場合に比べ、有意により校正を行う。
2)間接的フィードバックにエラーに関する説明が付随すると95パーセント信頼区間の範囲内において、説明が付随されない場合に比べ校正の割合が高くなる。
3)フィードバックの内容と校正の内容には強い関係性が認められた。
- 中竹舞依子(東京大学大学院博士課程)
■ 論題:日本人英語学習者の語彙サイズと語彙の使い分け能力の関係についての考察
■ 要旨
発表要旨:本研究の目的は、日本人英語学習者の語彙サイズと語彙の使い分け能力の関係を調査することである。語彙サイズとは、学習者が知っている単語の総数のことである。語彙の使い分け能力とはコンテクストに応じて意味の類似した単語(例:big/large)を適切に使い分けることのできる能力のことを指す。本研究では、語彙サイズと語彙の使い分け能力の関係を明らかにするために、日本の中学3年生から高校3年生を対象に語彙サイズテストと語彙の使い分け能力テストを実施し、以下の3つの研究課題について検討した。
1.語彙サイズと語彙の使い分け能力の間に相関はあるのか
2.相関がある場合、どのくらいの相関があるのか
3.学年が上がるにつれて、語彙サイズに応じて語彙選択能力はどのように変化するのか
調査の結果、①語彙サイズと語彙の使い分け能力の間にはmiddle-highの相関があること、②学年が上がるにつれて、学習者の語彙サイズも語彙の使い分け能力もともに伸びるものの、その伸び率は後者の能力の方が小さいということが確認された。
- 寺沢拓敬(東京大学総合文化博士課程)
■ タイトル:「英語が“使える”日本人」とは誰か?―計量的アプローチを用いた日本人の英語使用の現状把握
■ 発表要旨
政策議論には正確な現状把握が欠かせないが、日本の英語教育政策にはその面の研究が不足している。本発表では、日本人全体を代表する社会調査データ(Japanese General Social Surveys の 2002年、2003年、2006年版)をつかって、「日本人と英語」の現状を把握する。特に、「英語が使える日本人育成のための戦略構想」を意識し、日本人の英語使用、特に職業上の使用に焦点をあてる。(なお、その比較対象として、「職業外の英語使用」についても分析し、その結果を適時参照する)。
分析手順は以下の通りである。
(1) 業種(産業分類)にしたがって、英語との結びつきが強い職業とそうでない業種を分類する
(2) 英語使用の規定要因に関する理論モデルに基づき、使用に影響を与える要因を職種ごとに分析する
(3) 分析結果をもとに、日本人の「英語使用」がどのような属性の人物に配分されているのか、いいかえれば「英語使用の個別性」を あきらかにする。
以上の分析に基づき、「日本人と英語・英語教育」をめぐる議論はいかにあるべきかを考察する。
※時間に余裕があれば、カテゴリカル・データの分析に重宝する(にも関わらず、なぜか外国語教育研究ではあまり使われない)「ロジスティック回帰分析」の紹介もする予定。大ざっぱに言えば、ある(多重)クロス表に関して、独立性の検定(連関の有無)と効果サイズ(連関の度合い)を、複数の変数を統制しながら一度に算出する手法。ただし、単なるクロス表分析とは違い、独立変数に量的変数も持ってこれる点が強み。
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