場所:東京大学駒場キャンパス18号館2階院生ラウンジ(→キャンパスマップ) (なお、16:20より2階院生作業室に移動します)
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- 榎本剛士(立教大学大学院博士課程)「英語教育研究における言語人類学的アプローチ:Dell Hymesを蝶番として」
1960-70年代にDell Hymesが提示した“communicative competence”(以下、CC)という概念は、(言語)
教育研究の分野に、多大な影響を及ぼした。しかし、 CCという概念に異なる形でその影響のしかたは、研究分野が「(第二)言語教授法」と、 学校や教室における「教育実践一般」 のどちらを研究対象とするかによって大きく異なり、 最近になって、両者間の交通が盛んとなり始めた。 このような背景を鑑み、本発表では、 アプローチしてきた二つの大きな流れの「蝶番」として Hymesを位置づけ直し、さらに、教育言語人類学( linguistic anthropology of education)という視点を援用することで、両者間の交通を容易にするための理論的枠組の一端を明示化するこ とを試みる。 まず、本発表の出発点として、1980年代初頭のCanale やSwainを嚆矢とし、その後、SavignonやBachm
an らによってなされてきた、応用言語学・言語教育の分野における CCのモデル化を概観し、その上で、Hymes 自身が設定した、CC を体系化するための「四つの問い」を確認する。その際、(1) CCが提示された1960-70年代、Hymesが「コミュニケーションの民族誌」 (2) CCが「発話出来事」(speech event) に投錨された概念であること、以上二点について言及しながら、(という研究プログラムの旗手であったこと、 第二)言語教育向けのモデル化と Hymes自身による問題設定との間には、根本的な志向性の相違があることを明確にする。 続いて、Hymesの志向性を直接的に受け継ぐ形で展開した、
学校や教室の「民族誌」的研究の流れを素描する。具体的には、 Hymes 自身やCazden、Heath、Philips、Erickson らによって先鞭がつけられた、教育の場におけるコミュニケーションとそれを取り巻く社会文化的 CCの位置を同定する。コンテクスト、そして、 それらと不可分に結びついた価値づけや権力関係といった諸問題に おける、 以上を踏まえながら、近年、
社会記号論系言語人類学の理論を取り入れるかたちで形成されつつ (speech event, Es) 」 と「語られる出来事 (narrated event, En) 」 の区別、および、「前提的・創出的指標」という概念を導入し、Cある「教育言語人類学」の要石ともなっている、「発話出来事 C を扱う上記二つの流れのうち、「(第二)言語教育」研究における主な焦点を En としてのコミュニケーション、「民族誌」的研究のそれをEsとしてのコミュニケーションとして位置づける。このように、 Hymes に端を発するとされる二つの研究の潮流が扱うCCの異なる側面を、同じコミュニケーションの「場」に位置づけることによって、 両者を包含した、言語教育研究の枠組の明示化を試みる。
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