2009年4月25日土曜日

第1回例会(4月25日)

日時:4月25日(土)14:40~17:00ごろ
場所:東京大学駒場キャンパス18号館2階院生ラウンジ(→キャンパスマップ)  (なお、16:20より2階院生作業室に移動します)

  • 今後の予定について

  • 榎本剛士(立教大学大学院博士課程)「英語教育研究における言語人類学的アプローチ:Dell Hymesを蝶番として」

1960-70年代にDell Hymesが提示した“communicative competence”(以下、CC)という概念は、(言語)教育研究の分野に、多大な影響を及ぼした。しかし、その影響のしかたは、研究分野が「(第二)言語教授法」と、学校や教室における「教育実践一般」のどちらを研究対象とするかによって大きく異なり、最近になって、両者間の交通が盛んとなり始めた。このような背景を鑑み、本発表では、CCという概念に異なる形でアプローチしてきた二つの大きな流れの「蝶番」としてHymesを位置づけ直し、さらに、教育言語人類学(linguistic anthropology of education)という視点を援用することで、両者間の交通を容易にするための理論的枠組の一端を明示化することを試みる。

まず、本発表の出発点として、1980年代初頭のCanale Swainを嚆矢とし、その後、SavignonBachmanらによってなされてきた、応用言語学・言語教育の分野におけるCCのモデル化を概観し、その上で、Hymes自身が設定した、CC を体系化するための「四つの問い」を確認する。その際、(1) CCが提示された1960-70年代、Hymesが「コミュニケーションの民族誌」という研究プログラムの旗手であったこと、(2) CCが「発話出来事」(speech event) に投錨された概念であること、以上二点について言及しながら、(第二)言語教育向けのモデル化とHymes自身による問題設定との間には、根本的な志向性の相違があることを明確にする。

続いて、Hymesの志向性を直接的に受け継ぐ形で展開した、学校や教室の「民族誌」的研究の流れを素描する。具体的には、Hymes自身やCazdenHeathPhilipsEricksonらによって先鞭がつけられた、教育の場におけるコミュニケーションとそれを取り巻く社会文化的コンテクスト、そして、それらと不可分に結びついた価値づけや権力関係といった諸問題における、CCの位置を同定する。

以上を踏まえながら、近年、社会記号論系言語人類学の理論を取り入れるかたちで形成されつつある「教育言語人類学」の要石ともなっている、「発話出来事 (speech event, Es) と「語られる出来事 (narrated event, En) の区別、および、「前提的・創出的指標」という概念を導入し、CCを扱う上記二つの流れのうち、「(第二)言語教育」研究における主な焦点をEn としてのコミュニケーション、「民族誌」的研究のそれをEsとしてのコミュニケーションとして位置づける。このように、Hymesに端を発するとされる二つの研究の潮流が扱うCCの異なる側面を、同じコミュニケーションの「場」に位置づけることによって、両者を包含した、言語教育研究の枠組の明示化を試みる。

2009年4月8日水曜日

EASOLAについて

首都圏の研究者・学生が運営するインフォーマルな(しかしアカデミックな)研究会、EASOLA(Education, Anthropology, and Sociology of Language; 「言語教育学・人類学・社会学」研究会)の概要です。


0.参加資格


  • 参加資格はとくにありません。
  • 参加申し込みも必要ありません。
    • ただし、休日の場合、建物が施錠されていて入れないことがあるので、事前のご連絡をお勧めしています
  • 発表希望者は、寺沢まで事前にご連絡ください。



1.目的

A) 研究発表(学会での口頭発表や論文投稿)の予行練習として(※)
B) 修論や博論など具体的な研究に入る前段階の情報収集・ブレインストーミング
C) 言語教育学・言語社会学に関する情報の共有化

※ 通常の学会発表とは違い、プレゼンテーションに比較的多くの時間が必要な「質的研究」「学説研究」「歴史研究」に十分な発表時間が確保できる
※ 「量的研究」にとっても、学会発表では省略されがちな基本的な部分(被験者のプロフィール、質問紙の回答項目、生データの基本統計量、手法の選択根拠)などについて議論できる


2. 研究会の射程
  • 社会・文化・歴史・権力・教育・認知に関する現象を志向した言語研究
  • 社会言語学、言語社会学、母語/外国語教育研究、識字研究、学説史、言語政策など


3. 発表形態

A) 研究発表(例)
  • 実証研究(計量分析、フィールドワーク、歴史研究、テクスト分析 など)
  • 先行研究のメタ分析
  • イデオロギー分析/思想研究
  • 学説研究(学説史)、理論研究

B) 研究構想発表(例)
  • 修士2年:修論構想について「ご意見募集」
  • 修士1年:卒論の発表、および修士での研究の方向性に関して「ご意見募集」
  • 博士課程生:新たに始動する研究の構想、および先行研究レビュー

C) 書評・文献紹介(例)
  • 紹介したい論文・書籍等の紹介
  • 新刊・話題の本などの書評


4. 開催日時・場所

4.1.開催ペース

  • 2ヶ月に1回程度
  • 発表者がいない場合は休会です。

4.2. 曜日
  • 原則として、土・日・祝(発表者の都合を優先して決めます)

4.3. 場所
  • 原則として、東京大学駒場キャンパス内、どこかの教室
  • (詳細は、随時決定します)


5. ゼミ当日のスケジュール(一例です)

5.1. 研究発表・研究構想発表

  • ・1人持ち時間90分(延長可)
  • 発表:30分~45分
  • 質疑+議論:45分~60分

5.2. 書評・文献紹介
  • 1件につき60分前後
  • 紹介者による要約・問題提起:30分前後
  • 質疑+議論:30分前後


6. 例会までのスケジュール(一例です)
  • 例会1ヶ月前をめどに発表者の決定(いない場合には「休会」)
  • ブログやメーリングリストなどで告知
  • 発表者は2週間前をめどに要旨を提出