2009年8月29日土曜日

第9回例会

日時:08月29日(土)16:00~17:50
場所:東京大学駒場キャンパス18号館2階院生作業室(→キャンパスマップ) 

  • 発表者:榎本剛士(立教大学大学院博士課程)
  • タイトル:Teachers as frame keepers: Metapragmatic improvisation and regimentation in a Japanese high school “English conversation” classroom
  • 要旨:
本発表では、学校という場における「英会話」の授業を維持するために教師が駆使する、(無意識的な)メタ語用的ストラテジーを明らかにすることを試みる。

はじめに、本研究の理論的枠組みとなっている、社会記号論系言語人類学のコミュニケーション理論を提示する。そのうえで、関東圏のある公立高校における「英会話」の授業録音データをもとに、①英語教師、ゲスト、生徒による自己紹介を通じて、どのような参加の構造(=相互行為の枠組み)が授業導入時に立ちあげられているかを同定する。つぎに、②授業の展開部である「(ネイティヴ・スピーカーへの)インタヴュー・タイム」における相互行為を分析し、参加者によって前提とされている「相互行為のモデル」のプロトタイプを明らかにする。

以上、授業の参加の枠組み、また、授業において前提とされている相互行為のモデルを、データに則して確認した上で、本研究ではさらに、上記「枠組み」や「モデル」にひびが入ると同時に、それらが維持される瞬間を捉え、分析する。具体的には、「授業フレーム」をはみ出る(可能性を含んでいる)ような、4つの出来事を紹介し、それらに対して教師がさまざまなメタ語用的ストラテジーを(恐らく、無意識的に)駆使しながら、フレームの潜在的混乱を手なずけていく様子を描き出す。

このような、教室で実際に起こった相互行為を分析することにより、フレーム・キーパーとしての英語教師の役割を明示するとともに、英語教育にとって「学校」や「教室」がどのようなコンテクストとして作用しているかについて、考察を行う。