2009年7月18日土曜日

第7回例会、7月18日

日時:07月18日(土)14:40~17:50
場所:東京大学駒場キャンパス18号館2階院生作業室(→キャンパスマップ) 

  • 日時: 7月18日(土)14:40~
  • 場所:東京大学・駒場キャンパス・18号館・2F・院生作業室
  • 報告者:檜垣・寺沢(いずれも東大博士課程)
  • 題目:【論文評】批判的応用言語学
  • 課題文献
    Pennycook, A. (2006) Critical applied linguistics. In A. Davies & C. Elder, (Eds), Handbook of Applied Linguistics. Oxford: Blackwell
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  • 趣旨
     「批判的応用言語学」とは、主流の応用言語学が暗黙の前提としてきた「非政治性」「科学志向」「価値中立的態度」「静的言語観」などの問題性を指摘し、そのうえで、言語現象を社会文化的・政治経済的・権力的・動的な営みとして理解することを目指すアプローチである。この立場は、日本の応用言語学、とりわけ英語教育研究ではほとんど受容されていないが、欧米においては、周辺領域(e.g. 社会学・人類学・教育学)を含めれば、すでに80年代から、非常に大きな注目を集めている。
     ただし、批判的応用言語学は、単に、既存の応用言語学の否定のうえに成り立っているわけではなく、従来の応用言語学・社会言語学・外国語教育研究などが陥っている諸問題を批判的に検討することで、「より健全な応用言語学」を追求するものである。したがって、この立場に与しない人であっても、現在の応用言語学にはどのような限界があるかを理解することができる点で有用であると言えるだろう。
     本論文評で取り扱う Pennycook(2006)は、批判的応用言語学の理論的立場を、主流の応用言語学と対照するかたちでコンパクトにまとめた入門的性格の強い論文である。
  • 報告者より補足
  1. ネタ元 この論文は、以下の本の「超圧縮」版と言えます。余裕がある方はご一読下さい。Pennycook, A. 2001. Critical Applied Linguistics : A Critical Introduction. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum
    http://www.amazon.co.jp/dp/0805837922
  2. 参考になるwebサイト
    ・広島大学・柳瀬陽介先生による解説:http://yosukeyanase.blogspot.com/
    ・上掲書(Pennycook 2001)の読書会のレジュメ:http://d.hatena.ne.jp/CALx/
  3. 背景知識
     上の論文を読むうえでは、応用言語学の知識に加えて、思想史(特にマルクス主義、構造主義、ポスト構造主義など)、社会学(社会理論)、教育学、マイノリティ研究の知識が若干必要になります。その辺りに不安な方は、入門書の類で構いませんので、簡単に目を通しておいて頂けると、読解がスムーズになります。

    (文責・寺沢)

2009年7月4日土曜日

第6回例会、7月4日(土)

日時:07月04日(土)14:40~17:50
場所:東京大学駒場キャンパス18号館2階院生作業室(→キャンパスマップ) 


発表者
  • 伊藤健彦(慶応・M2)
発表タイトル:日本における第二言語WTC研究の可能性

発表要旨:
 現在の日本の英語教育の対象の一つである英語学習者の「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」と英語使用、英語学習の動機づけの関係を明らかにするために、第二言語Willingness to Communicate(以下WTC)研究を行なう。
WTC(コミュニケーションするか否かが自由な状況で、自らコミュニケーションを始める意思)モデル(MacIntyre, 1994)と、日本における第二言語WTC研究の問題点を教育心理学的に指摘した上で、日本人英語学習者における英語コミュニケーション変数と英語学習変数の関係を考察する。まず、従来のWTCモデルではWTCが直接的に言語使用を予測するとしているが、第二言語WTCについての実証的な研究を見ると、第二言語WTCは第二言語使用をほとんど予測していないことが分かる。この原因として、WTCモデルでは動機づけの認知論的アプローチ「期待×価値理論」における「価値」にあたる要因が想定されていないことを挙げ、「価値」にあたる要因を取り入れたWTCモデルを提案する。また、日本における第二言語WTC研究の多くが第二言語環境に特化した「社会教育モデル」(Gardner, 1985)を用いていることについて、外国語環境ではその有効性を十分に発揮できないことを指摘する。そして、代案として、自由記述によって広く日本の学習者の動機を捉えて構造化された、市川(1995)の「学習動機の2要因モデル」を用いる。以上の点を踏まえて、英語WTCと英語学習動機(6つの因子のう3因子:実用志向、関係志向、自尊志向)の積が、英語コミュニケーション使用に強い影響を与えているという仮説を立てた。仮説検証調査では、日本の高校生を対象に質問紙調査法を行い、全体的傾向と個人差の観点からデータを分析するため、共分散構造分析とクラスター分析を行う。
  • イリーナ・ドゥビーノカ(Iryna Dubynka)(東大・M2)
仮のタイトル:ウクライナの日本語非母語話者の中間言語における断りの発話連鎖について (Interlanguage Refusal Sequences by Ukrainian Non-Native Speakers of Japanese)

概要:
第二言語学習において、学習者の言語体系は母語を手掛かりとして目標言語へと向かっていく。このような母語とも目標言語とも異なった学習者特有の言語体系を中間言語という。本研究では、ウクライナの日本語非母語話者の中間言語における断りの発話行為に焦点を当て、インタラクションの中で、断りの発話連鎖はどのように展開していくかについて考察を行う。

現在、修論の構想を練っているところですので、皆様のご意見、ご助言をいただければ幸いです。