2013年11月10日日曜日

第27回例会(11/10 Sun.)

日時
2013年11月10日(日曜日)14:00-17:00

場所
東京大学駒場キャンパス 10号館4階 ALESSラウンジ
(入館にカードキーが必要ですので、学外者の方は連絡係・寺沢拓敬までご連絡ください)



発表1

発表者
谷口ジョイ(東京大学大学院総合文化研究科)

発表タイトル
Japanese Returnee Siblings' Biliteracy Attrition and Development(仮)

要旨
本発表では、海外生活を通して複数言語を獲得した子どもたちの言語能力を「リテラシー」という観点から記述し、帰国後どのように英語によるリテラシー能力を保持・伸長しているのかを明らかにすることを目的としている。先行研究から、帰国児童、及びその保護者の大多数は、現地で獲得した言語能力の保持を望んでいることが明らかになっている。一方で、長期的な展望に立っての言語教育活動を実践する者は限られており、どのような指導や活動に有効性が認められるのかについても、明確な結論が得られていない。

研究課題は以下の二点である。

(1) 言語喪失が急速に進行するとされる低年齢(小学生)の子どもたちを対象に、帰国後の英語によるリテラシー能力を長期にわたり調査し、その特徴はどのようなものか記述・考察する(本発表では、主に語彙の多様性について扱いたい)。

(2) 帰国児童への言語保持教育や読書習慣、保護者の言語保持に対する考えや価値観、個人的な生育環境や言語使用状況などを質的に調査し、どのような要因が英語によるリテラシー能力の保持・伸長に有益に働くのかを検証する。

先行研究では、海外で獲得した言語の「喪失」(そのプロセスなど)に焦点が置かれ、言語の「伸長」に関する研究はその数が限られている。また、帰国児童の言語を論じる際、渡航時、及び帰国時の年齢、滞在年数といった「数値化が容易であるもの」が変数として扱われてきたが、本研究により、保護者の意識や態度、子どもたちを取り巻く社会的ネットワーク、またリテラシー活動の質といった社会的要因が言語保持に重要な役割を果たすことが示唆された。



発表2

発表者
五十嵐 美加(慶應義塾大学大学院社会学研究科)

発表タイトル
Metalinguistic Ability, Motivation and Learning Strategies in Foreign Language Learning

要旨
メタ言語能力、すなわち言語の構造や機能について考える力が外国語習熟度に影響を与えるということは先行研究で明らかになっている。しかし、目標言語の学習動機や学習方略など、他の個人差変数との関係性を含めた複合的視点を持つ研究は見られない。そこで、本研究では、日本人高校生を対象とし、個人差変数のうち、メタ言語能力、英語学習への動機づけ、英語学習方略、及び英語習熟度を取り上げ、横断的調査を行っている。今回の発表では、主に、これまでの分析結果と今後の課題について報告する。



発表3

発表者
児玉 菜穂美(慶應義塾大学大学院社会学研究科)

発表タイトル
“Metalinguistic Ability and First Language Writing Skills”


要旨
 メタ言語能力が外国語の習熟度に影響を与えるということは先行研究で明らかになっている一方、メタ言語能力と母語の運用能力との関係を調査した研究は非常に少ない(メタ言語能力と初期段階のリテラシー獲得に関する研究は除く)。そこで本研究では、メタ言語能力と母語の運用能力の関係を明らかにするために、日本語母語話者の大学生・大学院生を対象に横断的調査を行った。
 具体的には、母語の書く力・メタ言語能力・論理的思考力・読書量を測定するためのテスト・アンケートを用い、それぞれがどれくらい関係しているのかを分析していく。また、複数の観点から書く力を測定し、メタ言語能力・論理的思考力・読書量がそれぞれ書く力のどのような観点と関係しいているのかについても明らかにする。
 本発表では、本研究の概要と現在までに得られた分析の結果についてお話しする予定である。