2009年6月20日土曜日

第5回例会、6月20日(土)

日時:06月20日(土)14:40~17:50
場所:東京大学駒場キャンパス18号館2階院生作業室(→キャンパスマップ) 


第5回例会

日時:6月20日(土) 14:40~17:50
場所:東京大学駒場キャンパス 18号館(※) 2階 院生作業室
発表者:
1. 谷口ジョイ(東大・総合文化・M2)
2. 竹本真衣(東大・総合文化・D1)


発表題目および要旨


1. 谷口ジョイ(東大・総合文化・M2)

テーマ:Retention of Literacy in Bilingual Children

海外において一定期間を過ごし、帰国する学齢期の児童・生徒(帰国子女)の現地語能力は、渡航年齢、在留年数など多くの要因によって幅があるが、彼らが一様に直面するのは、その言語の保持・伸長の問題である。
本研究は、言語保持という観点から12名の帰国子女を対象とした縦断調査を行い、英語によるリテラシー能力について考察する。
調査対象は、海外生活を通じて英語を習得している小学生帰国子女とし、以下2点を研究の目的とする。
(1)彼らの英語による読解能力の特徴がどのようなものか記述する。
(2)海外で身につけた読解力の保持・伸長に、どのような要素が関わっているかを、帰国後の保持教育、読書習慣、メディアとの接触、家庭内にける使用言語といった点から検証する。
研究の具体的手法としては、まず保護者との面接及び自由記述式のアンケート調査により、子供たちの言語環境を調査し、家庭や学校、その他の教育機関における言語使用状況や学習状況を多面的に把握する。また、読書習慣など、英語を用いた「読み」の活動がどの程度行われているのかについても調査を行う。子どもたちの読解能力に関する調査にあたっては、Hill, B.C.(2001)のDevelopmental Reading Continuumを踏まえたDevelopmental Reading Assessmentを使用し、(1)テクストの型、(2)音読、黙読、読みの速度、(3)読書行動に対する態度と傾向、(4)読みのストラテジー、(5)内容の理解と反応、(6)読書に対する自己評価といった観点から総合的に評価する。
調査は1ヶ月に1回、6ヶ月間にわたり行い、背景の異なる被験者の読解能力を、データ収集時にできるだけ正確に測定し、その後の推移を追跡調査する方法を採る。
現時点では分析の前段階にあるため、具体的な知見は得られていないが、被験者間の読解力の保持程度には非常に大きな差があることが見て取れ、読書習慣及び兄弟間での使用言語が関わっていることが示唆される。


2. 竹本真衣(東大・総合文化・D1)

テーマ:Footing in bilingual storytelling activities: Codeswitching in Japanese and English

要旨:
本研究は、ハワイで幼児期から日本語・英語の二言語に接する環境にいる5歳から8歳までの男女21人のバイリンガル児たち(5;0-8;11)の、語りにおける日本語と英語の言語の切り替えを調べた。
文字のない絵本に編集された物語を題材に、子供たちが自由に日本語と英語でそれぞれ語った音声データを基に、子供たちの言語切り替えが、どのような参与者のいる枠組みで、どのような自己の位置づけに基づいて決められているのかを、contexualization cue (Gumperz, 1982), footing (Goffman, 1981)を用いて、分析した。

分析の結果、バイリンガル児の言語選択は、お話を語るタスクの中で、談話中の様々な機能を表すために使われていたことがわかった。多くの場合、異なるコンテクストを表し、単にお話の情景描写をするのとは違うことを示すため、またオーディエンスかつ語りの参与者である仲間たちとの間で、自分の位置づけが変化した際に、言語を切り替えていた。

バイリンガル児の言語切り替えは、ランダムな行為ではなく、日本語・英語の言語内外的な情報と、話者自身の二言語を使ったコミュニカティブ・ストラテジーを示唆するものであった。