2010年4月24日土曜日

第15回例会(4/24)

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1周年おめでとう例会
日時:4/24 (土曜日)、14:40-17:50
場所:東大駒場18号館2F院生ラウンジ
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  • 発表(1)榎本剛士(芝浦工業大/立教大学異文化コミュニケーション研究科)

発表タイトル:高校生、英会話、メタ・コミュニケーション


本発表では、埼玉県の某単位制公立高校における「英会話」の授業で行われた、「新しく着任したALTに質問をする」というグループ・アクティヴィティの談話分析をもとに、教室における語用実践の階層性の一端を明らかにすることを試みる。

発表のはじめに、本研究が依拠するコミュニケーション観、そして、そのようなコミュニケーション観に則して分析を行う際に有効であると思われる、「メタ・コミュニケーション」(metacommunication)、「詩的構造」(metrical/poetic structure)、「コンテクスト化の合図」(contextualization cue)、「フレーム」(frame) および「フッティング」 (footing) といった概念を提示する。

つづいて、分析対象となっている授業のコンテクスト情報とデータに関する簡単な説明を行ったのち、「教室談話」研究において典型的に分析対象とされてきた、教師と生徒を主な参加者とした相互行為を見ていく。ここでは、「英会話」という、比較的自由闊達な「コミュニケーション」が志向されているかのように思われる授業においても、「教室談話」というジャンル特有の「IRE構造」(Initiation-Response-Evaluation)がかなり明瞭に観察されることを明らかにし、その結果、着任後間もないALTと生徒との間の非対称的関係が(授業初日から)明確に指標されていることを指摘する。

上記、「英会話」の「教室談話」を踏まえて、つぎに、生徒の机上にレコーダーを置くことで得られた、生徒同士の授業中の会話に焦点を当てる。具体的には、生徒がALTに対する質問を考える際にグループのメンバーと交わすやりとり、また、教師が行う説明に対する反応や、自らのグループ、他のグループの質問中/後にふと漏らされるコメントに着目する。このような、所謂「教室談話」の周辺に位置する談話を射程に収めた「二段構え」の分析を行うことによって、(1)「教室談話」に現れたALTへの質問(=言及指示テクスト)には、ALTに対する純粋な興味というよりもむしろ、他の生徒との関係、授業をどのように面白くするか、といった「高校生」としての関心事(イデオロギー)が強く重ね合わせられていること、そして、(2) 生徒は授業中、そこで行われていることについてのメタ的・(時に辛辣ともいえる程の)批判的な視点を持っており、その限りにおいて、教室内での生徒の英語使用は、生徒が投げかけるメタ語用的意識によって枠づけられている可能性が高いこと、以上の2点をデータから実証する。こうした分析プロセスを通じて、従来の「教室談話」研究ではあまり明らかにされてこなかった、教室で起こる言語コミュニケーション(=出来事)の階層性を示す。


  • 発表2:伊藤健彦(東京大学・人文社会系研究科)

題目:
高校生の英語コミュニケーション行動を規定する心理的過程:日本における第二言語Willingness to Communicate研究の批判的検討とモデルの提案


発表概略:
修士論文では、自己認知の観点から、期待と価値の心理的要因で構成される英語コミュニケーション行動を規定する心理過程モデルを構築した。これまで外国語コミュニケーションの心理過程における先行研究(Yashima, 2002; Hashimoto, 2002; Yashima, et al., 2004)では、Willingness to Communicate(コミュニケーションをするか否かが自由な場合において、自らすることを選択する傾向:以下WTC)の重要性が論じられてきた。しかし、その先行研究において方法論とモデルに問題点があり、そのを改善した上で比較検証をした結果、英語WTCは必要ないことが明らかになり、期待と価値から構成される新たなモデルが妥当であることが分かった。