2012年2月2日木曜日

第21回例会(2/19)

日時:2012年2月19日(日曜日)14:40-17:50、場所:東京大学駒場キャンパス18号館

■ 発表1
発表者:山下里香 (東京大学人文社会研究科博士課程)
タイトル:「 バイリンガル児童による多言語使用:モスク教室における crossing」

■ 発表2
発表者:永瀬恵子 (早稲田大学教育学研究科修士課程)
タイトル「修論構想:言語技術教育としての言語感覚の育成:国語科教育学における詩の指導」

■ 発表3
発表者:寺沢拓敬(東京大学総合文化研究科博士課程)
タイトル:「誰が早期英語教育政策を支持するか ---世論調査の計量分析」


発表1の要旨
     社会的マイノリティの言語・文化の親世代から子世代へ継承には,ミクロ・マクロの社会的・心理的要因が大きく関係していると考えられる.コミュニティ内の社会関係の維持・生成は、どのようにそうして言語の資源の分配・使用を通してなされているのだろうか.また,そのダイナミクスはコミュニティ内外の社会的構造・背景とどのように関わりあっているのだろうか.  本発表では,首都圏にあるモスクのコミュニティの教室における教師と児童の自然談話において,標準日本語を使いこなしている日本語・ウルドゥー語バイリンガル児童が,音声的,語用的,文法的に異なる特徴をもつ,親世代の南アジア人JFL話者の日本語をスタイル化したもの(以下SSAJ)を談話の中で使用した例を、linguistic ethnographyの方法を用いて分析する.順序として(1)SSAJの使用をミクロに分析し、(2)コミュニティの民族誌的フィールドワークから得られたデータからSSAJに付与された意味を論じる.  現段階の結論としては,バイリンガル児童によるSSAJスタイルの使用が,モスクコミュニティ内外でのメンバーの役割分担や上下関係,言語イデオロギーと関わっており,コミュニティ内で子供世代として上の世代と社会関係を構築する営みの中に組み込まれていると考えている.


発表2:要旨
     本研究は、日本の国語科教育のなかでも、特に指導が難しいとされる近現代詩の特性に焦点を当て、国語科教育における詩指導の必要性を、言語技術という観点から考察することを試みるものである。学習指導要領国語科目標のなかには、「言語感覚」という言葉が見受けられる。この「言語感覚」という語意は未だ曖昧な部分があるものの、言語に対して主観的・直観的な感覚であるというのが大方の識者の見解であるといえる。
     本発表においては、発表者の修士論文構想案を示した後、言語技術教育として、国語科教育の枠組みのなかで詩を用い「言語感覚」の育成をどのようにして行うことが可能であるのか、先行研究を踏まえながら考察していくことを目的とする。


発表3 要旨
     研究目的は、英語教育の早期開始を支持している人々の特徴を解明し、英語教育論と政治的立場の連関を検討することである。
     近年の英語教育改革を推進した政治的要因として、いくつかの説明がなされてきた。たとえば、「産業界の圧力」といった新自由主義的な説明や、「グローバル化に対応可能な英語力を育成してほしい」という「大衆」の要求など。一方、その対抗勢力として、「英語の前に日本語を」「日本人のアイデンティティが大切」のようなナショナリズムが対置されることも多い。
     しかし、実際には、これはそれほど単純ではない。「ナショナリスト」と目される人々が英語教育論に関しては真っ向から対立していたり、逆に、右派と左派の論者が同じ結論に至っていることも多い(「共闘」している場合すらある)。こうした錯綜した軸を解きほぐし、実態に即して政策論を展開するために、世論調査を2次分析する。

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