2013年9月14日土曜日

第26回例会(9/14土)

日時
2013年9月14日(土曜日)14:00-17:00

場所
東京大学駒場キャンパス10号館4階ALESSラウンジ
(入館にカードキーが必要ですので、学外者の方は連絡係・寺沢拓敬までご連絡ください)



発表1

発表者
山田雄司(東京大学・教育学研究科)

発表タイトル
【修論構想発表】日本の英語教師の母語話者性・非母語話者性
―生徒の言語習得・教員自身のアイデンティティに与える影響―

要旨
 新学習指導要領の「(英語の)授業は英語で」にみられるような、口頭コミュニケーション重視の流れを受け、日本の英語教育におけるALT(外国語指導助手)の重要性は今後高まっていくと考えられる。「言語はその言語の母語話者に習うのがよい」「母語話者だからといってその言語を教えられるわけではない」などの相反する通説はあるものの、ALTに関する先行研究の中で、生徒の言語習得や教員自身のアイデンティティに着目したものは数少ない。本発表では、先行研究を概観しつつ、現在考えている調査・実験デザインを提示する。


発表2

発表者
楊 廷延(ヤン・ジョンヨン)(群馬県立女子大学)

発表タイトル
能力記述文における難易度とは

要旨
近日中に公開します。


発表3

発表者
寺沢拓敬(国立音楽大学 [非])

発表タイトル
英語教育とナショナリズム ---戦後初期の「良識派」英語教師たちの教育思想

要旨
教育一般や国語教育・日本語教育の分野にくらべて、外国語教育におけるナショナリズムの検討は遅れている。本発表では、先行研究の蓄積が乏しい、戦後の20年間に焦点を当て、当時の英語教師たちのナショナリズムを明らかにする。とくに、しばしば「アメリカ化・非日本化」の時代と描かれがちな戦後初期英語教育界にも、独特のナショナリズムが存在したことを示す。この検討を通して、英語という「ソトのもの」を取り扱う教育者が「良識派」たろうとしたとき、ナショナリズムを動員してしまう、という外国語教育論のジレンマについて議論する


2013年7月21日日曜日

第25回例会(7/21 Sun.)


7月20日21時追記、発表順番が変更になりました。ご注意ください!


日時
2013年7月21日(日曜日)14:00-18:00
注意:今回は日曜日開催です!

場所
東京大学駒場キャンパス10号館4階ALESSラウンジ
(カードキーが必要ですので、学外者の方は連絡係・寺沢拓敬までご連絡ください)

発表1

発表者
奥田朋世(The University of British Columbia)

発表タイトル
ライティングセンター研究の新しい視座

要旨
本発表では、日本の大学で今人気を集めているライティングセンターの理念、目的、設立動機などを批判的に考察する。さらに、アメリカにおけるライティングセンター研究を参考にしつつ、新しい研究課題を示唆する。




発表2

発表者
永瀬恵子(早稲田大学教育学研究科)

発表タイトル
文学教材の指導方法と質的研究の接点

要旨
本発表では、国語科教育のなかでも特に文学教材へ焦点を当て、これまでどのような質的研究が行われてきたか、その一端を明らかにする。また、教科教 育としての質的研究(本発表においては、主に授業研究のことを指す)の課題点についても浮き彫りにし、教科教育学におけるこれからの質的研究への示唆とな り得るような問題提起を行いたい。



発表3

発表者
田中祥子(東京大学総合文化研究科)

発表タイトル
【修論構想】海外滞在経験の無い日本人大学生の英語に対する意識 ―探索的ミックスド・メソッドを用いた質的研究

要旨
本発表は、発表者の修士論文のための研究構想に関するものである。近年、日本の大学英語教育において、国際共通語としての英語(English as an international language; EIL)が重要視される(森住他 2010)一方で、世論調査などでは多くの日本人英語学習者が個人的には英語の必要性を感じていないということが示されている(寺沢 2013)。英語に関するこれらの認識は、一見矛盾をはらむものである。本研究は、このような矛盾する認識を持つ日本人大学生が、一体どのような目的を持って英語学習に向き合っているのかを、探索的ミックスド・メソッドを用いて明らかにしようとするものである。特に本研究では、自由連想法を用いた個別インタビューを主要データとし、各参加者の態度を質的に分析していく。




発表4

発表者
寺沢拓敬(千葉商科大学・国立音楽大学[非])

発表タイトル
東アジア4ヶ国における英語教育機会の格差 ―社会統計分析に基づく国際比較

要旨
日本だけでなく世界中で、個人の英語力と職業的成功の結びつきが(実態レベルにせよ言説レベルにせよ)強まっている。それにともなって、英語教育機会 ―つまり、英語力を獲得するチャンス― の格差に、以前よりも厳しい目が向けらている。本発表では、日本での英語教育機会の格差に関する自身の先行研究(http://ow.ly/mHbyq)を踏まえ、新たに視点を東アジアに広げる。しばしば、日本以上の「英語熱」と称されることもある、中国・韓国・台湾の英語教育機会を社会統計データを用いて計量的に分析し、日本の格差と比較する。その結果をもとに、社会階層論・教育政策論への示唆とする。



発表5

発表者
嶋内佐絵(日本学術振興会(PD)・横浜市立大学[非])

発表タイトル
「英語はすべての日本人に必要か?」 ―インターネット国民投票『ゼゼヒヒ』における言説分析を中心として

要旨
本発表では、2012年12月に公開されたインターネット国民投票ウェブサービス、『ゼゼヒヒ』における質問事項「英語はすべての日本人に必要か?」に寄せられた回答を分析し、インターネット使用者の英語や英語学習に関する言説の整理を試みる。有効回答数823件の中でコメント(100字以内)が付与された約600件を、類似した意見やまとまった概念ごとにカテゴリー化することを通じて、必要論と不要論がどのような論理のもとに主張されているのかを明らかにした。



2013年6月22日土曜日

第24回例会(6/22)


日時
2013年6月22日土曜日 14:00-17:00
場所
東京大学駒場キャンパス10号館4階ALESSスタジオ


発表1
予定しておりました永井敦「妥当性とは何か?- Messick (1989)を中心に -」は発表者の都合によりキャンセルとなりました。ご了承下さい。


発表2

発表者
山村公恵(東京大学・総合文化)

発表タイトル
[修論構想] 理系大学院生の書き直しに見られる英作文産出過程と方略について
―Stimulated Recallを用いたインタビュー調査を通して―

要旨
 科学技術分野において英語は主要な国際共通語であり(Grabe & Kaplan, 1996)、理系研究者にとって論文執筆は重要な研究活動の一環である(Latour & Woolgar, 1979; Knorr-Cetina, D. K., 1981)。また、企業に所属する理系研究者であっても、メールや文書による英語でのコミュニケーション能力が求められる。こうした状況を鑑みると、日本の高等教育機関において理系の学生に効果的な英作文指導を行う必要性は非常に高いと考えられる。しかしながら、科学技術論文のコーパス分析に関する研究が多くなされている一方で、理系の非英語母語話者が実際にどのように英作文を行っているのか、実態を把握するために役立つような研究は数少ないのが現状である。本研究では、日本語母語話者の理系大学院生にメール形式の英作文課題を与え、stimulated recallを用いたインタビュー調査を通して、書き直しに見られる作文産出過程及び方略を明らかにすることを試みた。調査方法はRose(1984)を参考にした。課題作業中の参加者の手元と正面からの様子を録画し、作業終了直後に参加者と一緒に録画映像を見ながら、ポーズや単語の削除動作時に何を考えていたのかを尋ねた。
 本発表では、修士論文構想として研究概要と録画映像やインタビュー内容の一部を提示する。構想段階であるため、多くの方々からのご意見やご助言を求めたい。



発表3

発表者
寺沢拓敬(千葉商科大学・国立音楽大学[非])

発表タイトル
日本社会における英語以外の外国語の学習に対する意識

要旨
本発表では、日本社会の一般の人々が英語以外の外国語に対しどのような意識を抱いているか検討する。日本全国に居住する成人を対象とした無作為抽出調査データを計量的に分析する。この調査に含まれる「英語以外の外国語の学習に対する興味」設問を、ジェンダー・世代・学歴など基本属性とどのような関係にあるか、そして、英語に対する意識との関係はどのようなものか分析する。そのうえで、各外国語に対する興味は、どのような要因によって生じているかを考察し、第二外国語教育論への示唆としたい。




2012年12月23日日曜日

第23回例会(12/23)


日時:2012年12月23日(日・祝)14:00~17:00
場所:東京大学駒場キャンパス10号館4階(暫定・変更あり) ※昨年までの例会と開始時間および場所が異なります



■ 発表1
発表者:田中祥子(東京大学・総合文化)
タイトル:「日本人大学生の英語の発音に対するイメージと自己効力感」
要旨  日本での国際英語論では、日本人英語学習者にとって「ネイティブのように話す」という目標は、「英語に対する消極的態度を引き起こすだけで、便利な英語運用能力を育成することにつなが」らない(本名, 2003, p.12)というような主張が度々されている。この議論は一見もっともらしく聞こえるが、実証的な根拠があるわけではない。そこで、本研究ではこの点を特に英語の発音に注目して実証的に調査したいと考えている。具体的には日本人大学生が持つ英語の発音に対する態度やイメージと、英語の発音が自分に習得できるだろうという認識、つまり自己効力感(バンデュラ, 1995)にどのような関係性があるのかを調査する。
  「日本人の英語の発音に対して否定的な学習者ほど自分の発音習得に関する自己効力感は低い」という仮説のもと、次のような研究を行う。まずは日本語を母語とする大学生英語学習者に質問紙に回答してもらい、日本人の英語の発音に対する態度と自己効力感に関する項目の相関係数を測定する。更に、より詳しく学習者の態度やイメージを聞く為に、質問紙調査への参加者から数人を選出し、PAC分析(内藤, 2002)を用いた調査をする。PAC分析は、回答者に与えられたテーマに関するキーワードを自由に連想してもらい、研究者がそれらのキーワードからクラスターを作成し、そのクラスターを提示しながら再度回答者に直接クラスターの表すイメージを聞き出すことで、回答者個人の持つイメージをより深くまで引き出そうとする研究手法である。
  発表者は、これら2つの手法から得られた結果をもとに、国際英語論で盛んにうたわれる日本人の英語の発音と学習意欲との問題に、より深い示唆を提供したいと考えている。
  なお、まだまだ研究計画の初期段階の発表である為、より多くの見識者からの助言をいただければありがたい。


■ 発表3
発表者:寺沢拓敬(東京大学・総合文化)
タイトル:「戦後日本社会における英語格差の構造とその変容―計量的および歴史的アプローチ」
要旨 英語の世界的な拡大とともに、非英語圏の国々でも英語学習の重要性が高まっている。それにともない、英語学習へのアクセスの差が大きな問題となっており、教育格差・地域格差が大きい国や教育水準の比較的低い国の政府にとって、懸案事項のひとつとなっている。この点に関して、日本の英語教育機会の構造およびその変容を検討することの意義は大きい。なぜなら、日本は戦後比較的早い時期に、学校教育カリキュラムの標準化・高等教育の大衆化が達成され、同時に、教育の地域格差の解消が目指された国であり(苅谷剛彦 『教育と平等』)、こうした点を踏まえれば、英語教育へのアクセスの問題を、教育格差・地域格差とはある程度独立させた状態で検討することが可能だからである。分析方法は、(1) 戦後における「英語教育機会」をめぐる特徴的な事例の検討、(2)  戦後に行われた世論調査のレビュー、(3) 無作為抽出標本に基づく社会調査データの計量分析である。


2012年10月8日月曜日

Sandra McKay 教授公開講演会


Sandra McKay 教授公開講演会
Special Lecture by Prof. Sandra McKay

日時/Date and Time:

2012年10月8日(月・祭日) 14:00 - 16:00
Monday (National Holiday), October 8, 2012, 14:00 to 16:00


場所/Place:

東京大学教養学部 駒場Iキャンパス18号館4階コラボレーションルーム1
Collaboration Room 1, Fourth Floor, Building 18, University of Tokyo Komaba I Campus

     

演題/Title:

Globalization, Culture, and Language Education (使用言語:英語/Language: English)
      

講演者/Speaker:

Dr. Sandra McKay  (サンフランシスコ州立大学名誉教授)
Dr. Sandra McKay, Professor Emeritus San Francisco State University


Abstract

Globalization is a much used and often loosely-defined term.  This paper will begin by considering the various definitions of globalization and examine what these suggest for current language use and language teaching.  The author will argue that while English often serves as a lingua franca in the present-day globalized world, this is not always the case. However, when it is used as a lingua franca, it is typically used in cross-cultural exchanges in which cultural frameworks are complex and negotiable.
Given globalization and the complex linguistic landscape it generates, the author explores what this means for English teaching today.  What should be the cultural basis of English teaching?  What grammatical, pragmatic, and discourse norms should apply?  What should be the cultural basis of classroom materials and methodology?  These questions will be fully explored in the presentation. In closing, the presenter will argue that the goal of culture learning in English as an international language pedagogy should be to promote a sphere of interculturality (Kramsch, 1998) and an awareness of the hybridity of cultural identity today.



参加費無料, 事前申込不要
Free admission, no reservation necessary



共催:
科学研究費助成事業(基盤研究C12001418)「日本人にとっての英語の資本性」
東京大学駒場言葉研究会 (KLA)
言語教育学・言語社会学研究会 (EASOLA)

Event jointly sponsored by
Grants-in-aid for Scientific Research 12001418 English as Capital for the Japanese
Komaba Language Association (KLA)
Education, Anthropology, and Sociology of Language (EASOLA)


問合せ: 東京大学 片山晶子  (研究室 03-5465-7614)
For further information, contact Akiko Katayama, University of Tokyo (03-5465-7614)
E-mail: akatayama@aless.c.u-tokyo.ac.jp



Prof. McKay Bio

Sandra McKay is Professor Emeritus of San Francisco State University. Her main areas of interest are sociolinguistics, English as an International Language, and second language pedagogy. For most of her career she has been involved in second language teacher education, both in the United States and abroad. She received four Fulbright grants, many U.S Department of State academic specialists awards and distinguished lecturer invitations.  Her books include Principles and Practices for Teaching English as an International Language (edited with L. Alsagoff, G. Hu & W. Renandya, 2012, Routledge), Sociolinguistics and Language Education (edited with N. Hornberger, 2010, Multlingual Matters), International English in its Sociolinguistic Contexts:  Towards a Socially Sensitive Pedagogy (with Wendy Bokhorst-Heng, 2008, Frances Taylor) and Teaching English as an International Language: Rethinking Goals and Approaches (2002, Oxford University Press, Winner of the Ben Warren International Book Award for outstanding teacher education materials).  Her articles appeared in such journals as the Annual Review of Applied Linguistics, Harvard Educational Review, English Language Teaching, International Journal of Applied Linguistics, Journal of Second Language Writing, System, TESOL Quarterly and World Englishes. She has published many chapters in edited books and given plenary talks at various international conferences, including the Asian International TEFL Conference in Korea, the Regional English Language Conference in Singapore and the EFL Asian Conference in Turkey.  She served as TESOL Quarterly editor from 1994 to 1999 and has served on the editorial advisory board for the Journal of Second Language Writing and the TESOL Quarterly.


2012年10月7日日曜日

第22回例会(10/7)

日時:2012年10月7日(日曜日)14:00~18:00
場所:東京大学駒場キャンパス10号館4階(暫定・変更あり) ※前回までの例会と開始時間および場所が異なります


■ 発表1
発表者:伊藤健彦(東京大学・人文社会)
タイトル:「就職活動における不公平が対人行動・政策態度に与える影響:個人的結果の原因帰属の観点から」
要旨 本研究では、就職活動における獲得的地位 (学歴)をもとにした不公平状況が、どう個人の否定的結果の原因推論に影響するのかに焦点を当てた。大学生を対象としたシナリオ実験の結果、1:自分が就職活動に失敗することについて自分が所属している集団よりも優位集団に多く原因を推論する傾向が見られ、従来の内集団奉仕的帰属バイアス研究 (Hewstone, 1990)と一致する知見が得られた。2:不公平状況において優位集団に対して原因を推論することは、優位集団と関わらないという防衛反応に影響し、その効果は内集団同一視が調整することが示された。

■ 発表2
発表者:高史明(東京大学・人文社会)・寺沢拓敬(東京大学・総合文化)
タイトル:「ツイッターを使ったテキストマイニングの理論と実践 ―コリアンに対する偏見を事例に
要旨 KHCoderを用いたTwitter(ミニブログサービス)における言説の解析事例を紹介する。まず寺沢が、テキストマイニング/内容分析/計量テキスト分析と一般に呼ばれる一連の手法について簡単に紹介する。次に、高が実際に分析事例報告を行う。テキスト分析題材として、コリアン(朝鮮人・韓国人)に対する偏見の研究を用いる。ツイート(投稿)を収集し分析するためのノウハウの紹介もする予定。

■ 発表3
発表者:岡部大祐 (青山学院大学・国際政治経済)
タイトル:「取扱い注意」―ある看護職のナラティヴ実践における病気の活用と対処
要旨  本発表では、ある女性(看護職)が、がん啓発イベントに参加した際の出来事について語った、不満話を事例として、その中で病気及びそれに罹患した人を、どのように取扱い、結果、どのような行為に従事しているのかを検討する。

発表では、データを分析する際の背景として、語り手が参加した啓発イベントの概要や、調査者との関係、データ収集の方法などのコンテクスト情報を紹介したのち、ふたつの挿話的なストーリーのナラティヴを分析する。

事例には、ナラティヴを相互行為として分析する、ポジショニング分析を援用する。分析では、ある状況では、自身の不満を正当なものとして作り上げ、同時に、有能な医療専門職という、社会的アイデンティティを行う「資源」として病気を用いる一方で、また別の場面では、上述の行為を成すために対処すべき「障害」として取り扱う様子を示す。

最後に、このような分析を通じて、語り手と聴き手の相互行為の中での病気の取扱われ方や、その生み出す効果が、病気の社会的意味の一部を示していることを述べる。



2012年2月2日木曜日

第21回例会(2/19)

日時:2012年2月19日(日曜日)14:40-17:50、場所:東京大学駒場キャンパス18号館

■ 発表1
発表者:山下里香 (東京大学人文社会研究科博士課程)
タイトル:「 バイリンガル児童による多言語使用:モスク教室における crossing」

■ 発表2
発表者:永瀬恵子 (早稲田大学教育学研究科修士課程)
タイトル「修論構想:言語技術教育としての言語感覚の育成:国語科教育学における詩の指導」

■ 発表3
発表者:寺沢拓敬(東京大学総合文化研究科博士課程)
タイトル:「誰が早期英語教育政策を支持するか ---世論調査の計量分析」


発表1の要旨
     社会的マイノリティの言語・文化の親世代から子世代へ継承には,ミクロ・マクロの社会的・心理的要因が大きく関係していると考えられる.コミュニティ内の社会関係の維持・生成は、どのようにそうして言語の資源の分配・使用を通してなされているのだろうか.また,そのダイナミクスはコミュニティ内外の社会的構造・背景とどのように関わりあっているのだろうか.  本発表では,首都圏にあるモスクのコミュニティの教室における教師と児童の自然談話において,標準日本語を使いこなしている日本語・ウルドゥー語バイリンガル児童が,音声的,語用的,文法的に異なる特徴をもつ,親世代の南アジア人JFL話者の日本語をスタイル化したもの(以下SSAJ)を談話の中で使用した例を、linguistic ethnographyの方法を用いて分析する.順序として(1)SSAJの使用をミクロに分析し、(2)コミュニティの民族誌的フィールドワークから得られたデータからSSAJに付与された意味を論じる.  現段階の結論としては,バイリンガル児童によるSSAJスタイルの使用が,モスクコミュニティ内外でのメンバーの役割分担や上下関係,言語イデオロギーと関わっており,コミュニティ内で子供世代として上の世代と社会関係を構築する営みの中に組み込まれていると考えている.


発表2:要旨
     本研究は、日本の国語科教育のなかでも、特に指導が難しいとされる近現代詩の特性に焦点を当て、国語科教育における詩指導の必要性を、言語技術という観点から考察することを試みるものである。学習指導要領国語科目標のなかには、「言語感覚」という言葉が見受けられる。この「言語感覚」という語意は未だ曖昧な部分があるものの、言語に対して主観的・直観的な感覚であるというのが大方の識者の見解であるといえる。
     本発表においては、発表者の修士論文構想案を示した後、言語技術教育として、国語科教育の枠組みのなかで詩を用い「言語感覚」の育成をどのようにして行うことが可能であるのか、先行研究を踏まえながら考察していくことを目的とする。


発表3 要旨
     研究目的は、英語教育の早期開始を支持している人々の特徴を解明し、英語教育論と政治的立場の連関を検討することである。
     近年の英語教育改革を推進した政治的要因として、いくつかの説明がなされてきた。たとえば、「産業界の圧力」といった新自由主義的な説明や、「グローバル化に対応可能な英語力を育成してほしい」という「大衆」の要求など。一方、その対抗勢力として、「英語の前に日本語を」「日本人のアイデンティティが大切」のようなナショナリズムが対置されることも多い。
     しかし、実際には、これはそれほど単純ではない。「ナショナリスト」と目される人々が英語教育論に関しては真っ向から対立していたり、逆に、右派と左派の論者が同じ結論に至っていることも多い(「共闘」している場合すらある)。こうした錯綜した軸を解きほぐし、実態に即して政策論を展開するために、世論調査を2次分析する。